■第22回(最終回) 振り返ること
このコーナーで連載を始めてから約2年がたちました。
1年目を思い出すと、通訳直後は「できなかった…」と感情的になって冷静に考えることができず、「自分の通訳技術が足りないからだ」と、ひとまとめにしてしまうこともありました。ですが、時間をおき、起きたことを文章にして整理してみることで、「問題はどこにあったんだろう?」とか「他に方法はなかったのか?」と考えることができたような気がします。
改めて自分にがっかりすることも多いのですが、掲載記事を読んでくれた通訳者さんや聞こえない人からアドバイスをもらえたり、「いつも読んでるよ~!」と声をかけてもらえることがとても嬉しかったです。通訳後に感じるモヤモヤを「できなかった」という一言で終わらせるよりも、解決させたほうがすっきりできるんだなと感じました。思い切って文章や声にしてよかったと思います。
通訳という仕事の楽しさや、苦しさ、自分だけでは気づけないこともたたくさんあると思うので、これからも振り返りをしながら、一つひとつ引き出しを増やしていきたいです。
ありがとうございました!
■第21回 連携する力
以前、ある式典で通訳をしたときのことです。
会場の広さや運営スタッフの多さに、それだけで圧倒されそうになりました。そんな時、一番心強かったのが同行の先輩通訳者さんでした。
自分でも事前に想定はしていたものの、いざ現場に行ってみると、本当に立ち位置はここでいいのかと判断に迷ってしまったり、音響の確認は誰にすればいいのだろうとオロオロするばかりでした。そのようななか、先輩通訳者さんは、それぞれの担当者に立ち位置や音響の確認をとり、通訳者側からの要望を伝え、担当者も快くその要望を聞き入れてくださいました。もし自分ひとりだったら、同じようにできただろうか?…
*サクライは先輩通訳者から何を学んだのでしょうか?
全文は『まざらいん』3月号で・・・
■第20回 原稿よりも目の前の話者
以前、ある催事の通訳をしたときのことです。
司会進行は聞こえない人が行い、私は冒頭の読み取り通訳を担当しました。事前に司会の原稿をいただいていたこともあり、原稿が手元にあることですっかり安心していました。「原稿があれば自分にもできる!」という甘え考えが今回の大きな反省点となりました。
続々と参加者が集まり、開会しました。「原稿どおりに読めば大丈夫」と自分に言い聞かせていたところ、司会者は当日の参加者の様子に合わせて、内容を変えながら話をしました。私は動揺して、言葉が出てこなくなってしまいました…
*サクライはこの通訳体験から何を学んだのでしょうか?
全文は『まざらいん』2月号で・・・
■第19回 文化と文化の間-後編-
昼食終了後、聞こえない人に気にかかていたこと場面のことを話してみました。やはり学生の様子に気付いていたようで、「もっと声優について聞いてみればよかった。教えてくれてありがとうというスタンスをもてばよかった」と話していました。うーん、お互いに反省…。私もあの場で、聞こえない人がポカンとした様子のときに、私が学生に「声優って何ですか?」と聞いてみることもできたのではないかと思います。会話が膨らめば、その学生も聴覚障害をより深く知る機会になっただろうし、聞こえない人にとっても、違う文化に触れる機会になったたかもしれません。
後から、10代、20代の間では声優が流行っていることを知り、そういえばテレビでも以前より見る機会が多くなっことに気づきました。あの学生さんは、初対面の人と自分の興味のある話題で打ち解けたかったのかもしれないと思うと、その気持ちに応えることができなかったことが申し訳ないです。たくさんの文化の中で架け橋となるのが通訳なのだと改めて勉強しました。
■第18回 文化と文化の間-前編-
ちょっと前のことです。手話に興味をもっている高校生数名と聞こえない人と一緒に昼食をとる機会がありました。お互い初対面です。私も一緒に食べながら必要時に通訳をしました。
普段の学校生活のことや、手話に興味をもったきっかけなどの話題が続く中、一人の学生から聞こえない人に向けて質問が。
「声優で誰が好きですか?」
せ、声優!? 声優を知っていることが前提での質問…。聞こえない人は50代です。
知らないのではないか、知っていても特定の好きな声優はいないのではないかなどと考えました。でも、それは私の勝手な解釈? 文化と年代の違いを感じつつ通訳しました。聞こえない人はポカンとした表情だったので、私は声優とは何かを説明しました。その意味を理解すると、<聞こえない、わからない>という返事がありました。
会話はそこから膨らむことはなく終わってしまいました。心なしかその高校生がシュンとしたように見え、昼食終了後もこの場面がひっかかっていました。通訳者として、他にできたことがあったのでないかと…。(後編へ続く)
*サクライの考える「できること」は何だったのでしょう?
後編は『まざらいん』1月号で・
■第17回 「笑い」を共有できる通訳って?
先日あ現場で聞き取り通訳を行ったときのことです。話者2名が登壇し、テンポよく掛け合いで話を進めました。
15分程度でしたが、次々と出てくる人名や地名。話者と聴衆だけが知っている、いわゆる身内ネタというのでしょうか。私は、ただただ話についていくだけで精一杯の状態でした。ですから、会場内が笑いに包まれるなか、通訳利用者が笑っていないと(今の自分の手話は伝わっていなかったのでは…)と不安になりました。今回の通訳で、話の“おもしろさ”や“笑い”を伝えることはすごく難しいことだと感じました・・・
*サクライの考える「笑い」の通訳については『まざらいん』11月号で・・
■第16回 交代のタイミング
講演会や研修会での通訳といえば、2~3名で交代しながら行うことが多いかと思います。自分の出番がいよいよ近づいてくるというときは毎回緊張してしまいます。それに加え、通訳場所と待機席が離れていたりすると、スマートに交代しなければと思い、余計に緊張してしまいます。「この一文を言い終えたら」「次のスライドに移ったら」とタイミングを見計らい、今だ!と思って腰を浮かせると、間髪入れずに次の一文が始まってしまい、そっと腰を下すという不審な動きを何度とったことでしょうか。次こそは…を繰り返すうちに、交代が遅れてしまったこともありました。・・・
*サクライが見とれた交代の様子は『まざらいん』10月号で・・・
■第15回 通訳者に向けられた質問~その場にいる人同士をつなぐって?②~
先日、職場で出前講座を行い、私は「ワンポイント手話講座」の読み取り通訳を担当しました。打ち合わせは当日朝に行うこととなり、それまでにいろいろと考えました。
聴者に手話を教えるときの読み取り通訳ってどうるんだろう? 資料を表示したり配布したりすれば読み取りは不要? それとも動きを詳細に言語化したほうがいいのだろうか? など、何パターンか考えていました。
そして当日。打ち合わせで言われた通訳方法は・・・
*サクライが指示された通訳方法は『まざらいん』9月号で・・・
■第13回 読み取り通訳上達への道~後編~
言葉が出てこないという他、直面した問題がありました。読み取っているうちに、話のつじつまが合っているのかわからなくなるということです。
たとえば今回のような講話の中で、何か小テーマについて話すとき。始めは「あ、今からこのことを話すんだな」と、話者と同じ方向を向いてスタートするのですが、だんだん何の話をしているのか、自分の中で整理できなくなってしまいます。始めは話者と同じ方向を向いていたはずなのに、気づくと自分だけ別方向を向いていたという感覚です。・・・
*サクライの挽回策は『まざらいん』7月号で・・・
■第12回 読み取り通訳上達への道~前編~
ある研修会で、読み取り通訳を担当したときのことです。45分程度のもので、通訳者2名で行いました。たしか、話者が屋内に取り付けるパトライトの話をしたときだったと思います。話の流れの中で、私は「インターホン」と言いたかったのに、その単語が出てこず、詰まってしまいました。(ピンポーンじゃなくて、呼び鈴じゃなくて、ベルじゃなくて、うーんと、うーんと…) 何とか思い出そうと集中していたとき、隣の通訳さんから「インターホン」と一声! それだー!!
*サクライの反省は『まざらいん』6月号で・・・
■第11回
早いもので、新登録から1年がたとうとしています。
1年を通し、通訳が終了するたび毎回のように思っていることは「これでよかったのか? 正解は他にあったのではないか?」ということです。反省点が明確な場合は、的を絞って振り返りができますが、自分のとった行動がよかったのか、だめなのかもわからずに通り過ぎてしまったこともたくさんあるように思います。他の通訳者さんだったらどうするかな? とも考えますが、思いつかないまま終わらせてしまうことも…。他の方法が思いつかないということは、まだまだ自分の中の引き出しの数が少ないということなのだと思います。・・・
でも、少なくともこの記事を書いた分だけ引き出しの数は増えた!…はず。そう思うようにして、2年目もがんばろう!
*サクライが考えたことは『まざらいん』5月号で・・・
■第10回
半年ほど前のことになりますが、ある講座で自分が通訳している姿をビデオに撮り、振り返る機会がありました。自分の手話を見る機会ってなかなかないものです。一通り撮り終わり、さあ振り返り!・・・ビデオに映った自分を見ると、それはがっかりでした。手形があいまいで、全体的にぼやーっとした印象です。昔から手形にメリハリがなく、流れてしまうのが課題だと認識していましたが、ここまでとは・・・。このままではいけないと思い翌日から「手形強化月間」と題し、通訳のたびに一つひとつの語をはっきりと表出するよう試みました。・・・
*サクライが発見したことは『まざらいん』4月号で・・・
■第9回
通訳の現場では、要約筆記の皆さんとご一緒する機会が多いです。正直はじめのころは「要約筆記も一緒なんだな」くらいにしか思っておらず、接する機会といえば挨拶と打ち合わせ、マイクの音量確認を行うくらいのものでした。手話は手話、要約筆記は要約筆記、と分けて考えていたように思います。
そんな情報保障とは何なのかわかっていなかった自分ですが、数々の現場で一緒になるうちにあることに気づきました。・・・
*サクライが気づいたことは『まざらいん』3月号で・・・
■第8回
先月参加した登通班の例会。ここ最近ぶち当たっていた「資料の読み込み方」について皆さんから意見をいただきました。自分では思いつかないような意見に、目からウロコの連続でした。その数日後、職場である通訳を仰せつかり、資料も用意されるとのことでした。これは早速実践できるチャンス!資料よこい!と念じておりましたが、詳細の資料は当日配布されることに。迎えた当日、次第のほかに別冊1、2・・・、読み原稿など膨大な資料が手渡されました。・・・
*その後のサクライの奮闘は『まざらいん』2月号で・・・
■第7回
最近、部屋の掃除をしていたら、以前つけていた通訳の記録が出てきて、読み返してしまいました。その中に、初めてみみサポサロンで通訳をしたときのことが書いてありました。参加者が複数名いる中で、うなづきや質問に対して回答のある方にばかり視線を向け、反応のない(おそらく通訳が伝わっていない)方には視線を向けずに通訳をしてしまったというものです。・・・
*その後のサクライの行動は『まざらいん』1月号で・・・
■第6回
先日、職場で通訳を行った際、“通訳場所”について考えた出来事がありました。その場面は、1時間程度の講演後、4~5人のグループに分かれ、参加者同士で意見交換を行うというものでした。講演会の通訳なら何回か経験はあるけれど、グループでの意見交換・・・!講演後の10分間の休憩中、頭をフル回転させて適切な通訳場所を考えました。・・・
*フル回転でサクライが考えたことは、『まざらいん』12月号で・・・
■第5回
先月号で書いた青写真についての後日談です。記事を見たという聴覚障害の方から、こんな意見をいただきました。「もし自分だったら、相手が何と言ったのか、その言葉自体を知りたい。<青/写真>と言葉をそのまま表出してほしい」というものでした。・・・
*通訳ユーザーの意見からサクライが学んだことは、『まざらいん』11月号で・・・
■第4回
先日、自分の日本語力のなさを痛感する出来事がありました。職場で事業に関する打ち合わせが行われ、主に聞き取り通訳を担当しました。会議も終盤にさしかかった頃。「青写真をお願いします」・・・ん? あおじゃしん? 一瞬止まりました。なぜこのタイミングで写真の話?しかも青い写真て何? もう頭の中は???の状態です。・・・
*「青写真」を知らなかったサクライがとった行動は、『まざいらん』10月号で・・・
■第3回
最近、職場や派遣先で先輩通訳者さんの姿を見て、はっと気づいたことがあります。それは、打ち合わせなどで聴覚障害者が発言する際、読み取り通訳する私の「すみません」という呼びかけの第一声がとても小さく、申し訳なさそうに発していることです。声の大きさやトーンは状況によって変える必要があるのでしょうが、私のは必要以上に申し訳なさそうになっている気がします。・・・
*気づきからサクライが学んだことは、『まざらいん』8月号で・・・
■第2回
先日、職場で他機関との打ち合わせに同席し、通訳を行ったときのことです。
その打ち合わせでは、日時や場所の取り決めや、提出資料の締切などについて話し合われました。(ここは正確に伝えなければいけないところ) 約束事に関しては普段以上に正確に伝えるよう心がけて通訳しました。
通訳終了後、自分の通訳に対する反省とは別に何か心に引っかかるものが・・・。合意して終了したはずの打ち合わせ。でも、もやもやしているような・・・すっきりしないような・・・
*もやもやからサクライが学んだことは、『まざらいん』7月号で・・・
■第1回
先日、職場での出来事です。聴覚障害の職員にかかってきた電話の通訳を行いました。日常的な業務として、通訳をやっているので、心積もりはあったのですが・・・。突如舞い込んだ電話通訳の機会にあたふたとしてしまい、反省の残る結果となってしまいました。
そこで起きた二つの問題とは。
①上手く体制を整えることができないまま受話器を持ったため、片手のみでの手話表現となってしまった。
②自分の手話表現が対象者に伝わっていないと思い、必要以上に補足説明をしてしまった。
*その結果とサクライの学びは、『まざらいん』6月号で・・・