社会運動って何だろう?

 8月15日~18日、インドネシア・ジョグジャカルタで、WASLIアジア手話通訳者会議2024が開催されます。2006年から継続的に開催されている会議です。世界ろう者会議や世界手話通訳者会議が開催される年は、その会期中に行われますが、その間の3年間は、アジアのどこかの国または地域でWFDアジア地域事務局代表者会議とWFDアジア青年部キャンプ、アジア手話通訳者会議を同じ会場で開催してきました。東北ろうあ者大会と東北地区手話問題研究大会が一緒に開催されるのと同じような感じですね。

 

 私は、2018年12月にタイで開催されたアジア会議に初めて参加しました。WFDアジア地域事務局代表者会議のプログラムの中に「Women Group Discussion(アジアろう女性ディスカッション)」という時間がありました。男性をシャットアウトした女性のみ(性転換した人も含む)の会議です。本来ならばろう女性のみが集まる場でしたが、私たち手話通訳者数名は記録のため同席していました。議題は女性部の組織について、ろう女性の権利回復、女性部の会員拡大などでしたが、やはり話題は「権利」に集中しました。

 

 おりしも、日本では2018年1月に旧優生保護法による強制不妊手術を受けた人が国に対して謝罪と賠償を求める訴訟運動が始まり、全日本ろうあ連盟は、旧優生保護法に基づく強制不妊手術等の実態調査を行っていました。その取り組みが報告されると、男性からの抑圧、男女差別、性的暴行など、「ろう+女性」であることによる権利侵害の事例が多数挙げられました。女性であるために十分な教育を受けられず、人権はもとより、自分の体を守るための知識がない。被害を訴えたくても手話通訳がいなければ法的手続きができないなどの発言が続きました。知識を共有し、抑圧に立ち向かう仲間や支援者を増やすためにも、ろう者団体の女性部はとても重要な位置づけだと思いました。今度のアジア会議でも「Women Group Discussion」の時間が予定されています。苦しみを打ち明け合うだけではなく、変化と発展を報告できる会議になっていることを願います。

 

 日本からは、7月3日最高裁の勝訴判決が報告されるのではないでしょうか。この判決では旧優生保護法が憲法13条( すべて国民は、個人として尊重される)、憲法14条(すべて国民は、法の下に平等であって差別されない)に違反していたと断じました。たしかに、優生思想は人権侵害であると考える方も多いのではないでしょうか。では、私たちの中に優生思想はなくなったのでしょうか。NIPTや出生前診断など最近の医療技術の進歩によって、生命の選択が行われるようになりました。NIPTにより胎児に異常が見つかった場合、90%以上の人が人工妊娠知中絶をするというデータがあります。同検査で、聴覚障害の可能性も調べられるといいます。今回の判決をとおして、いま、私たちの「内なる優生思想」について考えるべきではないかと思っています。

                                会長  宮澤典子