WASLI(世界手話通訳者協会)~手話は違えど思いは同じ~

7月4日(火)~9日(日)、韓国・済州島でWASLI Conference 2023 in South Korea(世界手話通訳者会議in韓国)が開催されました。世界手話通訳者会議は4年ごとに開催されており、今回は6回目になります。参加者は、69か国・地域から455人(会場379人/オンライン76人)。日本の参加者は 31人(会場29人/オンライン2人)でした。

世界手話通訳者会議を開催するには、まず、招待者(実行委員長)を選任します。これは開催地に関係なく立候補を募り、その中から選任されます。今回は、初のアジア開催ということもあり、マレーシアのルーシー(聴者)とアンソニー(ろう者)が共同招待者に選任されました。そして、二人を中心に、2年半の時間をかけて韓国のスタッフやアジアの近隣国と協力しあいながら準備を進めてきました。コロナ禍によりオンライン行事が普及してきましたが、今回の世界手話通訳者会議は、集合型で行うことを目指して準備を進めてきました。379人が参集した会場ではあちこちで国際手話が飛び交い、世界中の手話通訳者が集合を喜んでいる様子が見られました。

全通研は、来年迎える創立50周年記念に先駆けて「WASLI2023韓国ツアー」を催行しました。参加者は12人。宮通研の事務局長も参加してくださいました。現地につくまでは、言葉の壁や海外の通訳者たちとの接触に不安があったかと思いますが、会場入りしてからは、どんどん国際手話を吸収し積極的に会話するなど、交流を楽しんでいただけたかと思います。9月3日(日)には「WASLI Conference 2023 in 韓国~報告会in宮通研~」が予定されています。ぜひ、参加者の生の報告をお聞きください。

 

手話通訳者の国際組織の必要性は1975年から提唱されはじめ、その後世界ろう者会議にあわせて、手話通訳者が集まり会議や研修会を続けてきました。そして2003年にWASLI(世界手話通訳者協会)設立に向けた本格的な準備が始まり、2005年南アフリカ・ウースターに40 か国以上から 220 名を超える代表者が集まりWASLI設立となりました。設立の2年後2007年に、世界ろう者会議と開催地や開催時期を合わせる協定を結び、以来4年ごとに世界会議の開催を続けてきたというわけです。

この経過は、全通研設立までの過程と似ているように思います。日本では1968年、福島県の板橋正邦氏(当時 全日本ろうあ連盟議長団)の呼びかけで、全国ろうあ者大会にあわせて第1回全国手話通訳者会議が開催されました。以降第7回まで全国ろうあ者大会と同時に開催され、第7回会議が開催された1974年に継続的な活動ができる組織として全国手話通訳問題研究会が設立されたのです。来年度、創立50周年を迎えますが、全通研集会は第1回全国手話通訳者会議から通算しており、今年のサマーフォーラムinとくしまは第56回となります。

WASLIは、世界中の手話通訳者の専門性の向上を目指しています。日々の運営は会長をはじめとする6人の理事と、9地域2人ずつ(聴者とろう者)の地域代表によって進められています。4年ごとに開催される世界会議の際に総会が開かれ、国会員協会の出席によって議事審議が行われます。総会の発言権や投票権をもつのは国会員のみです。国会員になるためには、全国レベルで定款を掲げる通訳者組織であることが条件となっています。日本では全通研と日本手話通訳士協会が国会員となっています。全通研は国会員であり、全通研の国際部長はアジア地域代表を歴任してきました。今回の総会で、アジア地域の代表として、宮澤(聴者)と川上恵氏(ろう者・日本)、マレーシアのアンソニー・チョン氏(ろう者)が選任されました。また4年間頑張りたいと思います。

 

新型コロナウイルス感染症が少し治まり、さまざまな行事が集合・対面形式で行われるようになってきました。6月には東北でロック研修会が福島県で開催され、東北6県から42人が参加しました。東北ブロック研修会の報告が掲載されていますのでご覧ください。また、8月には徳島でサマーフォーラムが開催されます。こちらも実に3年ぶりの集合開催となります。全通研集会は、かつて講座中心の夏の集会と冬の討論集会が開催されていました。現在は、冬の討論集会を夏の集会に統合してサマーフォーラムとして行っています。2019年度に石川で予定されていた集会は残念ながらコロナ禍のため中止となりました。2020年度山形で開催された際は記念式典・記念講演・講座のみをオンラインで配信する方法で行われました。そして、昨年度の茨城もオンラインでしたが、講座や分科会は事前に収録したものを当日配信し、式典と記念講演のみ当日リアルタイムで配信する方法でした。事前収録のための日程調整や撮影の手配などとても大変な作業を経て実現したものでした。物理的な距離をカバーするにはオンラインはとても有効です。しかし、講演や講座など一方向配信のものには有効ですが、討論や合間に行われる参加者同士の情報交換、交流をサポートするのは苦手です。そして、このプログラムの合間に行われる情報交換や交流こそが、たくさんの知見や思いを共有する貴重な時間となるのです。これは国内の行事でも、国際的な行事でも同じでした。

人と会えること、人と言葉を交わせることのありがたさとすばらしさを大切に享受していきたいものです。

 会長  宮澤典子