新しい年も「コミュニケーション」を

年頭にあたり、新年のご挨拶を申し上げます。

 

日本漢字能力検定協会が毎年「今年の漢字」を募集し、12月に発表しています。2022年の漢字は「戦」でした。2 月から現在まで続く、ロシアによるウクライナへの侵攻が、世界に大きな衝撃を与え、さらに北朝鮮による相次ぐミサイル発射などにより、多くの人が「戦」争への恐怖や不安を感じたことが理由としてあげられていました。そして2位は「安」。「戦」の不安を転じて安全・安心・安定に対する切望を感じます。

また、1年の社会情勢がうかがえるものにユーキャン新語・流行語大賞もありますね。トップテンを見ると、たしかに「ああ、よく目/耳にした語句だなぁ」と思えるものばかりです。トップテンではありませんでしたが、選考委員特別賞の「青春って、すごく密なので」が心に残っています。甲子園の優勝旗が初めて「白河の関」を越えた喜びもさることながら、さまにコロナ禍の真っただ中で高校生となり、高校生活や部活動を送ってきた選手たちのかけがえのない3年間を称える言葉だと思います。

 

人類と感染症の戦いは紀元前から存在します。世界史でも14世紀にヨーロッパで猛威を振るったペスト菌により2億人もの死者が出たことを学びましたね。新型コロナウイルス感染症による死者数は累計667万人です。(2022.12.23 ジョンズ・ホプキンス大学)

当然ながら、過去のパンデミックはその都度社会制度や市民生活に大きなダメージを与えました。新型コロナウイルスパンデミックにおいても、医療機関や社会機能のひっ迫をはじめ、市民の社会活動に対する抑制が起こりました。繰り返される自粛要請やソーシャル・ディスタンス要請は、人と人の関係を絶ち、人が人として生きる喜びを得られる、人とかかわる機会を奪いました。ICTの向上と普及が、その機会をカバーしたかのようにも思えますが、ヒトが誕生してから15万年、言語が出現してから10万年もの間、人が繰り返してきた対面によるコミュニケーションを代行することはできません。

 

2022年8月22~23日にスイスの国連ジュネーブ本部で障害者権利委員会による「障害者権利条約 第1回建設的対話」が行われ、9月9日には権利委員会から日本政府へ勧告(総括所見:懸念93項目、勧告は92項目、留意1項目、奨励1項目)が出されました。手話に関する勧告として「日本手話を国レベルの公用語として法律で認め、生活のあらゆる場面で手話へアクセスとその使用を促進し、有能な手話通訳者の訓練と利用可能性を確保すること」があげられています。日本政府は、2028年2月20日までに定期報告の提出を求められています。勧告の改善に向けて、当時者団体をはじめ関連団体との協議による取り組みを期待します。いつの時代も社会が不安定になったときにまず負の影響を受けるのは社会的弱者です。このような時代に「障害者権利条約」をとおして、今一度人権について学び語り合うことが必要ではないかと考えます。2023年度も「対話」「コミュニケーション」を大切に生き生きと過ごしましょう。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。 

会長  宮澤典子