7月23日、1年遅れで東京オリンピック競技大会(TOKYO 2020)が開幕しました。東京開催が決定してから7年かけて準備してきた平和の祭典です。
開会式はシンプルながらも「日本」を意識した演出がなされました。会場のステージには「Faster, Higher, Stronger – Together(より速く、より高く、より強く、そして共に)」というIOCの新しいモットーが浮かび上がりました。1894年国際オリンピック委員会(IOC)設立時から掲げられてきたモットーである「Faster, Higher, Stronger(より速く、より高く、より強く)」に今回から「Together(共に)」が加わりました。COVID-19パンデミックと闘った世界の連帯を思わせる言葉です。オリンピックは多様性を受け入れ尊重する姿勢を打ち出しています。
今回の開会式は無観客のなか行われました。国民はみなテレビ中継で開会式を見守ったことと思います。しかし、この「多様性と調和」を掲げるオリンピック開会式の映像に手話通訳の姿はありませんでした。全日本ろうあ連盟は、3月26日付で大会組織委員会あてに「東京2020オリンピック・パラリンピック聖火リレー セレブレーションへの手話通訳者の配置について(緊急要望)*」を提出しました。聖火リレースタートの式典に手話通訳の配置がなかったためです。その要望に対して、橋本聖子大会組織委員長から、その後のセレモニーや聖火ゴール地点すなわち開会式には手話通訳をつけるようにすると回答がありました。たしかに開会式会場のビジョンには手話通訳者の姿がありました。しかし、開会式会場には観客は一人もいなかったのです。中継で手話通訳者が映ったのはほんの一瞬であり、それはとても通訳と言えるものではありませんでした。閉会式やパラリンピック開閉会式では改善されるのでしょうか。ここはやはり声を上げるべきですよね。
ところで、開会式の後半には平和の象徴であるハトが飛び交うような演出がありました。2019年の第74回国連総会において、186か国の共同提案により、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催期間中のオリンピック休戦決議が採択されました。つまり7月23日から9月5日までは戦争が休止となるわけです。もともとは選手や観客の安全を目的としたものだったそうですが、現代ではオリンピックをとおして平和の実現を希求する活動になっているのです。ヒトとウイルスの闘いは言葉や対話で鎮めることはできませんが、人と人の争いは対話を繰り返すことによって平和に転ずるかもしれません。平和を願いながらオリンピック期間を過ごしたいものです。
会長 宮澤典子
*全日本ろうあ連盟HP https://www.jfd.or.jp/2021/03/27/pid21785