2020年上半期は、世界中が、新型コロナウイルスパンデミックという恐慌に陥りました。発生源といわれる中国のニュースを対岸の火事と傍観しているうちに、日本でも感染者が急増し、テレビをつければコロナの話題ばかりで、さまざまな感染対策が唱えられるようになりました。ろう者や手話通訳者を取り巻く環境をはじめ社会全体が大きく揺さぶられるなか、全通研活動も大きな影響を受けました。
全通研は「コロナウイルス禍における支部活動の現状と課題」について47都道府県支部にアンケートを行いました。(実施時期2020年5月1日、提出期限2020年5月20日、回答状況46/47支部) 設問は、総会について、役員会の開催について、地域班・専門班会議について、機関紙の発行について、学習会等の開催について、会員拡大についての6項目です。
総会については、書面決議が36支部(78%)、開催・縮小して開催が7支部(15%)、その他3支部となっています。宮通研も含めかなりの支部が書面決議に変更しましたが、そのための方法の模索や準備にはかなりの労力が必要でした。運営委員の知恵を総動員して、はがきやFAXによる返信、Goolgeフォーム等を利用したWeb投票などさまざまな方法が考えられました。また対面で実施した支部も、会場に体温計や消毒薬を準備したり、三密を避けるような配置を考えての実施だったようです。
役員会については、通常どおり開催できている支部が3支部(7%)、縮小および中止した支部が35支部(76%)でした。規模を縮小・中止したときの連絡方法としては、メール利用が35支部、電話・FAXが11支部、Web会議を実施したところも5支部ありました。メールやFAXは意見のとりまとめに時間がかかります。Web会議は三密を気にせず顔を合わせてリアルタイムで意見交換ができますが、Webに対応できる環境の有無に左右されます。LINEグループなどは対応できる役員も多く、よく活用されているようです。「ほうれんそうを心がけている」という記述がいいなぁと思いました。
地域班・専門班会議については、中止が38支部(83%)、縮小が5支部(11%)とほとんど休止状態のなか、開催できている支部が1支部(2%)だけありました。対面の班活動は実施できないものの、「みんなの健康を考える班」がコロナ感染予防やロコモティブシンドローム体操などの手話付き動画を作成し、高齢ろう者や外出自粛中の方々に配信したという取り組みがありました。最近は、スマートフォン等の普及で、動画制作・配信が手軽にできるようになりました。便利なツールはどんどん支部活動に取り入れられるといいですね。
支部機関紙の発行については、編集会議や印刷作業が困難である中、32支部(70%)が発行を継続しています。学習会等で顔を合わせることが難しいからこそ、支部機関紙をとおしてつながりを強めたいという気持ちの現れと思います。宮通研でも『まざらいん』の定期発行を頑張っています。月末に『まざらいん』が届いたら、ぜひぜひ手に取ってお読みください。
学習会の開催については、中止が37支部(80%)、開催しているところが2支部(4%)で、ほとんどの支部が学習活動を休止していることがわかります。外出や集会の自粛要請が続いていること、会場となる施設が休館状態であること、学習会の企画相談ができないことなどの理由があげられています。宮通研でも支部学習会について検討していますが、長距離移動が課題である場合は、地域班の例会を強化してはどうか、または、宮通研ホームページなどで学習教材や学習ネタを提供できないかなどの案が出ています。ぜひホームページものぞいてみてください。(https://www.ztk-miyagi.com/)
会員拡大については、会員加入手続きや会員加入の呼びかけにおいて支障があるという回答が45支部(98%)でした。例年は、総会や学習会の機会に呼びかけ、入会手続きをすることが多かったのですが、今年は集まる機会がないので、呼びかけも入金も難しい状態です。また、コロナ禍により経済的ダメージを受けた会員もいるかもしれません。こうしてみると、本当に9年前の震災後の状況に酷似していると思わざるを得ません。それでも宮通研は今年度5名の新入会員を迎えました。Welcome!
悔しいことに大きな災害や禍いが奪っていくものは少なくありません。それでも、私たちは時をつなげていかなければなりません。だからこそ、転んでもただでは起きないぞ!禍を福に転ずるぞ!と強く思います。福となる一歩として、宮城県知事会見や仙台市長会見に手話通訳がつくようになりました。新しい試みです。だからこそ、画面に登場する通訳者だけにすべてを任せ、批評するだけではなく、通訳者仲間や視聴者とともに、意見を交換し合いながら共によりよい報道通訳を作り上げていきたいものです。一人の経験はみんなの経験に、みんなの思いは誰かの支援になります。エビデンスに基づいた手話通訳を提供できるように。そのような全通研活動をしていきたいと思います。
(会長 宮澤典子)